前回:第4話「社会人MBAに通って半年。実際に感じたこと」からの続きです。まだ読んでいない方は、以下からどうぞ。
社会人として働きながらMBAに通い始めて、もうすぐ1年。
半年前、第4話を書いたときは、「思っていたより仕事とMBAを両立できている」と感じていた。
授業にも慣れてきて、レポートやグループワークの進め方も少しずつ分かってきた。「このまま2年間、なんとかやっていけそうだ」と思っていた。
ところが、この半年で状況が変わった。
5月に仕事の部署異動があり、仕事とMBAの両立が一気に難しくなったからだ。
今回は、社会人MBAの楽しさだけではなく、実際に1年間通ってみて感じた「両立の壁」と、MBAによって変わった自分の仕事への見方について書いてみたい。
この半期の成績は、S6・A1・B1
まず結果から。
この春学期も上限いっぱいの8科目を履修し、S評価6科目、A評価1科目、B評価1科目だった。
前回、第4話を書いた時点ではS3・A4・B1だったので、S評価だけを見ると3科目から6科目に増えた。
成績だけを見ると、順調に見えるかもしれない。
実際、1年間通って社会人学生としての進め方に慣れたことは大きいと思う。
最初の頃は、ケースを読んでも「何を答えればいいのか」がよく分からなかった。それが少しずつ、「この授業では何を考えることが求められているのか」「この問題を自分の仕事に置き換えるとどうなるか」と考えられるようになった。
単に知識が増えたというより、物事を見るための視点が増えたという感覚に近い。
ただ、この成績とは裏腹に、この半年は決して楽ではなかった。
5月の部署異動で「両立」の景色が変わった
春学期が始まったのとほぼ同じタイミングで、私は部署異動を経験した。
それまでは、仕事・MBA・家庭をなんとかバランスさせながら生活できていた。
ところが異動後は、仕事を優先せざるを得ない場面が増えた。
授業を欠席することもあったし、グループワークでも他の学生と予定を合わせるのが難しいことがあった。
ここで改めて感じたのが、社会人MBAの難しさは「仕事と勉強の両方が大変」というだけではないということ。
仕事の状況を、自分だけではコントロールできない。
これが一番大きい。
MBAの授業は基本的に予定が決まっている。一方で、仕事では突然の会議や依頼、トラブルなどが入ってくる。
仕事が落ち着いているときは「両立できる」と思っていても、仕事の環境が変われば、その前提は簡単に崩れる。
これは、入学前でもある程度は想像していたが、実際に色々なことが重なってリアルな体験として
来ると、かなりの疲労感はあった。
平日22時まで授業。その後に仕事とレポート
具体的には、平日は22時まで授業。
そこからグループワークをして、さらにレポートを書く。
そこへ仕事の残りが加わる。
その日の夜に終わらせるか、間に合わなければ翌朝早く起きて出社前に仕事をする。
そんな生活が続いた時期もあった。
社会人MBAを考えている人には、「本当にこれを2年間続けられるの?」と思われるかもしれない。
正直、私も思った。
でも、この1年間で分かったのは、全部を完璧にやろうとすると続かないということだった。
仕事もMBAも家庭も、すべて100点を取ろうとすると、どこかで無理がくる。
だからこそ、何に時間を使うのかを自分で決める必要がある。
優先順位の立て方は本当にうまくなったと感じている。(笑)
体調を崩しかけて、「休むこと」も大切だと分かった
実際、この生活が続いた時期には体調を崩しかけた。
それまでは「あと少しだからやろう」と、睡眠時間を削ってしまうこともあった。
でも、無理を続ければ結局パフォーマンスが落ちる。
そこで意識するようになったのが、疲れているときは素直に寝ること。
ものすごく当たり前のことだが、自分にとっては意外と難しかった。
MBAは2年間ある。
1週間を全力で走り切ることよりも、2年間最後まで走り切ることの方が大切だと考えるようになった。
社会人MBAを続けるには、頑張ることだけではなく、「今日は休む」と決めることも必要なのだと思う。
MBAで、企業を見る視点が少し変わった
もちろん、大変なことばかりではない。
この1年間で、仕事にもつながる学びがかなり増えた。
例えばビジネスモデル戦略の授業では、自分がこれまであまり関わってこなかった業界の企業を題材に、ビジネスモデルキャンバス(BMC)を作成した。
最初は専門外の企業を分析することに戸惑ったが、他の学生と議論していると、自分の業界だけにいたら気づかなかった視点が見えてくる。
「この会社は何を売っているのか」だけではなく、
「誰にどんな価値を提供し、誰とつながることでビジネスを成立させているのか」
と考えるようになった。
これは、自分の仕事を見るときにも役立っている。
自分がいる業界でも国、自治体、地域、取引先、設備メーカー、金融機関など、多くの関係者とのつながりの中で事業が成り立っている。
他業界を分析したからこそ、自分の会社を少し外側から見ることができるようになったと思う。
ファイナンスを学んで「数字の裏側」を考えるようになった
ファイナンスの授業も印象に残っている。
DCF、PBR、PER、ROIC、EVA、NPVなどを学んで、数字を見るときの意識が変わった。
以前は「利益が増えた」「売上が増えた」といった結果を見ることが多かった。
今は、
「なぜこの数字になっているのか」
を考えるようになった。
例えば、投資案件のNPVがプラスだから投資する、というだけでは経営判断にはならない。
その投資によって何を実現したいのか。
どこに資本を配分するのか。
どの程度のリスクを取るのか。
数字の先にある「経営の意思」を考える必要がある。
これまで技術畑で仕事をしてきた自分にとって、これは大きな変化だった。
プリウスの開発事例から考えた「場」
知識創造の授業では、トヨタのプリウス開発の事例も印象に残った。
そこで考えたのが、「知識を持っている人がいるだけでは、組織は変わらない」ということだ。
会社には、技術に詳しい人、制度に詳しい人、現場を知っている人など、たくさんの専門家がいる。
それでも、組織として良い答えが出せないことがある。
なぜなのか。
MBAで「場」や知識創造について学んでから、問題は「知識がないこと」ではなく、「持っている知識をどう組み合わせるか」なのではないかと考えるようになった。
そして、そのためには単に会議を開くのではなく、「そもそも何を実現したいのか」という問いを共有することが重要なのだと思う。
これは、これから自分が管理職として仕事をしていく上でも、大切にしたい考え方になっている。
MBAに通って、会社の見え方まで変わってきた
そして、この1年間で一番予想していなかった変化がある。
会社を見る目が変わったことだ。
経営戦略や組織、リーダーシップ、ファイナンスなどを学ぶと、会社で起きていることを、それまでとは違う角度から見るようになる。
以前なら「そういう考え方もあるよな」と受け止めていた経営層の発言にも、
「この意思決定は、どんな戦略につながっているのだろう?」
「実行するための組織能力はあるのだろうか?」
と考えるようになった。
その結果、以前は気にならなかったことが気になるようになった。
部署異動後は、正直に言えば「この人を目標にしたい」と思える上司が、今の自分には見つからない。
そして上司からの指示や仕事内容にも納得する意義が感じられない。
周りの仲間、上司とも色々な会話をしているが、どうも自分には納得できない。
ただ、これは「自分の方が分かっている」という話ではない。今の仕事も重要だし、
一般的な意義はもちろん、わかる。でも「これでいいのか?次世代に何が残るのか?」と考えると
どうも今の会社組織に疑問が残っている。
これは、MBAで視座が上がったつもりでも、単に人の欠点が見えるようになっただけかもしれない。
経営層には、自分が知らない情報や制約があるかもしれない。
だからこそ、批判するだけではなく、「自分ならどうするのか」まで考えなければ意味がない。
そう考えると、今感じている違和感も、自分自身が次のステージに進むための材料なのかもしれない。
MBAをきっかけに、転職も考えるようになった
そして、この変化はキャリアにもつながっている。
MBAに通う前は、「今の会社の中でどう成長していくか」ということを中心に考えていた。
でも、他業界の人たちと話し、企業を分析し、経営について学ぶ中で、
「自分は今の会社の中でしか価値を出せないのだろうか?」
と考えるようになった。
MBAに行った目的が転職だったわけではない。
むしろ、MBAに通ったことで、自分がこれまで経験してきたことを、他の会社や業界でどう活かせるのかを考えられるようになった。
「今の環境でどうするか」だけではなく、
「自分はどんな環境で、どんな価値を生み出したいのか」
という問いを持つようになった。
これは、この1年間で得た大きな変化だと思う。
残り1年。卒業するだけでは終わらせたくない
これから残り1年は、修士論文にも本格的に取り組む。
仕事もある。MBAもある。家庭もある。
正直、まだまだ大変そうだ。
できれば留学などの別の理由で卒業を延ばすことなく(笑)、2年間でしっかり修了したい。
でも、ただ単位を取って卒業するだけでは、少しもったいない。
せっかく社会人として働きながらMBAに通っているのだから、仕事で使える考え方を身につけ、自分の経験を理論と結びつけ、普段の仕事では出会えない人たちと話したい。
そして何より、この2年間を通して、自分がこれから何をしたいのかを考えたい。
1年前は、「MBAをちゃんと卒業できるだろうか」という気持ちの方が大きかった。
今は、それに加えて、
「MBAを卒業したあと、自分は何をするのだろう?」
ということも考えるようになった。
これも、社会人MBAに1年間通ってきたからこそ出てきた問いなのだと思う。
社会人MBAに1年間通って、今思うこと
入学して半年の頃は、「意外と仕事とMBAは両立できる」と思っていた。
1年経った今は、少し違う。
仕事の状況が変われば、社会人MBAとの両立は簡単ではない。
これは、この半年で身をもって実感した。
でも同時に、MBAで学んだことによって、仕事を見る目も、自分のキャリアを見る目も変わった。
そう考えると、この1年間で一番大きかったのは、知識が増えたことではないのかもしれない。
「自分はこれから何をしたいのか」を考えるための視点が増えたこと。
これが、私にとっての社会人MBA1年目だった。
残り1年。
修士論文もある。
仕事もある。
家庭もある。
まだまだ大変そうだが、せっかく始めたMBAなので、最後までしっかり走り切りたいと思う。
そして卒業するときに、「大変だったけど、やってよかった」と思える2年間にしたい。
次回は、修士論文のテーマが固まったタイミングか、あるいは何か大きな転機があったタイミングで書こうと思う。
改めての再掲になるが、過去のシリーズはこちらから




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